「1990年の少年」駄文の実験場

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パンマン開発計画(自立歩行型パン人間の開発)について

パンマン文化振興財団 『財団史』第2章より抜粋
<昭和64年2月> パンマン文化振興財団 西日本局長 やかせたなし著

 

■パンマン開発計画概要

昭和50年代から60年代にかけて本国における「パン食」の文化が大きな広がりをみせ、官民においてパン食文化のさらなる発展のため「自立歩行型パン人間」を開発するという機運が高まっている。

当財団ではこの自立歩行型パン人間を「パンマン」と呼称し、国内外の有識者の協力を経て、新たにパンマンの開発にかかる体制が整った事をここに報告する。

この新たな開発計画については第一期から第三期までの大きく3つの工期に分けて順次開発を行っていく予定である。

第一期では3タイプのパンマンを開発する予定である。
「アンパン」「しょくぱん」「カレーパン」である。
この3パンマンを昭和62年4月度より開発に着手し、昭和64年5月に完成する予定である。

第二期では新たに5タイプのパンマンを開発する。
「乾パン」「蒸しパン」「揚げパン」「イングリッシュマフィン」「フォカッチャ」である。

この第二期、5パンマンは昭和64年4月度より開発に着手し、昭和67年5月に完成する予定である。

第三期では新たに18タイプのパンマンを開発する予定である。18種類のパンのタイプに関しては第二期の完成後に一般から酵母(公募)を行う予定である。

最終的には、第一期から第三期まで合わせて26タイプのパンマンが開発されることになる計画である。昭和62年より昭和72年までの10年間を目途に全26パンマンの開発を完了させ、全てのパンマンを各都道府県に配備する予定である。なお一部のパンマンについては複数の県をまたいだ兼任を予定している。

 

 

■パンマンの目的

全ての国民は生まれながらに「お腹を空かせない権利」を有している。これを「お食事権」という。

このお食事権をめぐって近年では国内外で様々な問題が発生し、国民の権利を阻害する要因として認識されるに至っている。

その一つは食料を媒介として繁殖する人類絶滅を目的とした細菌兵器、いわゆる「バイキン」の問題である。さらに、バイキンほどレギュラーではないものの、7日あたりに2日の割合(土金)で出没してくる、いわゆる「ドキン」の問題も根深いものとして認識されている。

さらに国内においては新たな人類と思われる生命体が誕生し、すでに既存の人類の食料を奪い合う事態が発生している。
この新たな人類の特徴としては、人間の胴体に動物の顔が付いている。いわゆる「カバオ」の問題である。

さらなる外的要因も発生しており、この新たな人類をさらに模倣したような新型の新たな人類も出現してきているとされている。いわゆる「しまじろう」の問題である。

近年発生しているこれらの問題に対し、実際に国民のお食事権を侵害するにいたる事件も発生しており、これらの問題を防止するために自立歩行型パン人間を開発を急ぎ、国民のお食事権を安全に保障するための法律、いわゆる「PAN MANagament(パンマネージメント)法案」略称「パンマン法」が、本国会の場で承認された。

この法案で政府は、本国の全ての都道府県に自立歩行型パン人間を配備し、全国民に対し安定的にパンを供給することを約束した。

 

 

■プロトタイプ計画

自立歩行型パン人間の開発は政府が主導し、いくつかの民間企業の協力を得て行われることになった。

プロトタイプ構想としては先に「自立歩行型人間」を製造し、その後から「パン」を接続するという設計で進行した。

政府はこの「人間」の製造を「松下電機」に、パンの部分の製造を「山崎パン」にそれぞれ依頼した。

政府が松下電機に依頼したのは理由がある。それは松下電機の創業者、松下幸ノ助の言葉である。

松下幸ノ助はかつて会社の理念に関して次のように述べている。

「我々は物を作っているのではない、人を作っているのだ」

松下電機は家電製品を開発する事業を通して、社員それぞれが自立したひとりの「人」としての成長することを後押ししている。そんな企業理念が、当時の政府が提唱していた自立歩行型パン人間の思想と合致していたのである。

一方で、パン製造を請け負うことになった山崎パンであるが、政府からの要請が性急なものであった事も影響してか、この年の「春のパン祭り」はやむを得ず休止している。

春のパン祭りが休止になったことを受け、テレビや舞台で活躍する役者の松元幸四郎山崎パンに対し激しい抗議を行った。抗議の内容は「娘のたか子が春のパン祭りをとても楽しみにしていた」というものであった。

この抗議を受け、山崎パンは「白いお皿」を松元家にプレゼントし、その時の対応が良かった事をきっかけにその後の長い期間にわたるお付き合いが始まったといわれている。

 


■テスト計画

自立歩行型パン人間とは、人間という名称がついているものの、その実態は工場で製造される製品である。製品である以上、初期不良の有無を確認したり、設計通りに稼働するかテストしなくてはならない。

ここではプロトタイプ完成時に実施されたテスト項目の一部をご紹介する。

①自立歩行に関して

パン人間は自分の足で立ち上がる事ができ、二足歩行できるものとする。
また各種音楽(○○パンマンマーチ)に合わせ、簡単なダンスを踊れるものとする。

②他人を認識できること

パン人間は自分自身と他者を区別することができる。また、人間と動物の区別ができるものとする。
「ぼく、○○パンマン。きみは?」と発言することができたら合格とする。

③知能を持ち、会話ができること

おおむね8歳程度の知能レベルを有すること。
ただし、街に時々あらわれるおじいさん(バイキンが変装した姿)は見破る事はできない。
これは知能が8歳程度に意図的に抑えられているからである。

④正義感を持っていること

悪者を認識し、パンチやキックで排除する能力を有する。
正義感が行き過ぎていないかも確認しておく。

⑤顔が脱着可能であること

パン人間の顔は脱着可能であるものとし、交換可能であるものとする。
これを「顔交換インターフェース」(別称:パンマンインターフェース)と称し、工業規格において国際標準を目指す。これについては次項に詳細を記載する。

 


■顔交換インターフェース ver1.0 ver2.0

顔交換インターフェース ver1.0 では、以下の仕様を定義している。

・性格、知能、行動データはパン側に持つこと。
・パン交換後も、性格、知能、行動が変わらないこと。
・パン交換後も、記憶が保持されること。
・胴体側はマントとベルトを常時着用すること。
・胴体側のベルトは対応する「顔」のロゴマークを入れること。
・胴体とパンの関係は、1対1であること。

 

さらに ver1.0 を発展させた ver2.0 では、以下の仕様を定義している。

・パンマン自身が、自分の顔を製造できること。
・同一人物のパンマンが、同じ時間帯に並行して複数体稼働できること。
・胴体とパンの関係が「 n 対 n」であること。(マトリックス型接続と呼ぶ)

 

[編集者注記]
※顔交換インターフェースは ver1.0までの内容で開発が終了となっている。したがってver2.0で稼働しているパンマンは存在していない。
※ただし「 n 対 n」接続に関しては「だんご三兄弟インターフェース」で技術的に成功している。(平成11年1月)
※複数体同時稼働の技術に関してはゆるキャラくまモン」が実現し商業的にも成功している。(平成22年3月)

 

 

■パンマンの量産開始と政局不安、プロジェクトの終焉

パンマンのプロトタイプ3体が完成を迎え、計画通りに量産体制に入ろうかといった頃、政局が乱れ、与党が国政選挙で大敗。また、民間においてもパンマンのパチモンが市場に出回り大混乱に陥っていた。

この異変は大阪が発端であった。

ある大阪の民間会社がパンマン用の顔としてドラえもんの顔をインターフェースに対応させて製造したのである。さらにそれを模倣した別会社が、サザエさん天才バカボンの顔をミックスさせた商品を流通させ、市場はいっそうの混乱をみせていた。

この事態を与党は沈静化することができず、国会で野党からの追及をまぬがれることができなかった。そしてパンマンに関係するすべてのプロジェクトは一時中止せざるを得ないという状況にまで追い込まれた。

やがて昭和が終わり平成の世となった。

大衆は政府が主導して開発していたパン人間の存在を忘れてしまった。

ただし、ある作家の活動が起点となり、パン人間は子供向け作品として生まれ変わる事となる。

パンマン計画の第一期で予定していた「アンパン」「しょくぱん」「カレーパン」。これを原案としてテレビアニメーション作品として蘇らせることとなった。

その後のパン人間の活躍ぶりは周知のとおりである。