「1990年の少年」駄文の実験場

妄想の日々を文書化しブログに流し込む事にしました。例えるなら脳内のトイレです。

新時代をリードするダンジョン開発とは

■社長あいさつ
『株式会社ダンジョン開発』
  代表取締役社長
  段 正雲 (ダン ジョンウン)

 

わたしたちは、魅力的なダンジョンを開発することで、地域社会の発展と、魔王討伐を図る勇者さまの成長をご支援しております。

1998年に起業いたしました私たちは、魔王軍からの委託を受け、ダンジョンの開発・運営をワンストップで手掛けるアウトソーシング事業として急成長いたしました。

2000年代には国内のダンジョン開発におけるトップシェアを確立し、現在では諸外国の魔王軍さまに対してもサービスを展開しており、その歴史・文化などの地域差を活かした魅力的なダンジョンを次々と開発しております。

2002年より開始した「魔王討伐後の勇者さまアンケート」ですが、2008年度の集計結果では、「ダンジョン満足度97パーセント」という非常に高い記録を更新し、現在もほぼ同等の数値で推移しております。

また、勇者さま業界団体が発行する月刊誌 「月刊 ああああ」 の20周年企画 「もう一度訪れたいダンジョン50選」に弊社が開発したダンジョンが55箇所も紹介されました。

このような嬉しい評価を頂きましたのもひとえに勇者さまご一行、地域社会のみなさま、魔王軍さまの多大なるご支援の賜物であります。この場をお借りいたしまして厚く御礼を申し上げます。


■弊社のダンジョン開発・運営の概要について

弊社が手掛けるダンジョン関連業務は大きく2つ、「開発」と「運営」に分かれます。

その1つ目、「ダンジョン開発」は大きく3つに分かれ「企画」「設計」「開発」と、それぞれを請け負う専門部署を設置しております。

ダンジョン関連業務の2つめ、「ダンジョン運営」につきましては大きく5つの業務、「営業」「経理」「人事」「広報」「総務」の業務に細分化されます。


<企画部の業務概要>

本日は「ダンジョン開発」に関連する3つの部門から「ダンジョン企画部」の業務についてご説明を申し上げたいと思います。

ダンジョン企画部では、新しくダンジョンを作る際のダンジョンのタイプを決定しています。ダンジョンタイプは、「通りぬけダンジョン」「ほら穴ダンジョン」「隠しダンジョン」などに分類されます。

また、ダンジョン企画業務においてもっとも重要視されるのが「収益性」です。

さてここで皆さまに問題です。皆さまはダンジョンがどのような形で「利益」を出しているのかご存知でしょうか。

ダンジョンの「収入」の多くは、「勇者さま一行が全滅した際、彼らが所有しているお金からその半額をいただく」という事で成り立っております。

そうして得たお金から「社員の給料」「宝箱の中身」「ダンジョンの修繕費」などの費用を支払い、その残りが「利益」となるのです。

この「ダンジョンの収益性」というのは、とても調整が難しいものです。単純に多くの勇者さまを何度も全滅させれば良いというものではありません。

すべての勇者さまが毎回ダンジョンに入る度に全滅してしまっていては、お手持ちのお金が無くなってしまい、「しばらくダンジョンに入るのは止めておこう」という気持ちになってしまうと思います。

魅力あるダンジョンというものは、より多くの勇者さまにご来場いただき、その持てる力を存分に発揮していただく必要があるのです。

そして、勇者さまにつきましては、よりいっそうレベルを上げ、新しいスキルを身に付け、仲間との連携が上手く出来るようになった、ちょうどそんな時期、俺たちノリに乗っている、そんな風に感じられる瞬間を見計らって弊社から総攻撃を仕掛けさせていただきまして全滅させていただく、という形を取らさせて頂きます。

そんな形が、今の時代に求められるダンジョンの有り方なのではないかというご提案をさせて頂いております。

弊社では常に新しいニーズや新しい魅力を備えたダンジョンを計画・立案してまいりたいと思います。

勇者さまにおかれましては、よりいっそうご活躍いただきまして、弊社ダンジョンへの御来場(御来ジョン)たまわりますよう、今後ともよろしくお願い申し上げます。


<営業部の業務内容>

ここからは「ダンジョン営業部」の業務をご紹介したいと思います。

その前に、企画部で計画・立案したダンジョンが実際に建築されるまでの流れを簡単にご紹介したいと思います。

企画部が計画・立案したダンジョンは魔王さまの承認の後、設計部にて設計書が作られ、開発部がその設計書に基づいてダンジョンの建築を行います。

新しいダンジョンの建築現場では実際に建築を始める前にまずはじめに現地にて「地鎮祭(じちんさい)」をとり行います。

地鎮祭」を行う事で「魔物」や「邪気」を払い、新しく作るダンジョンがトラブルなく安全に建築できるように「神さま」にお祈りします。

無事に建築が完了したダンジョンは一連の建築作業に関わった関係者をお招きして「竣工式」をとり行います。魔王さま、弊社社員、地域住民の方々一同で、新しいダンジョンの完成をお祝いします。

さて、ここからがわたしたち「営業部」の業務開始です。

「営業部」の主な業務はいたってシンプルです。「勇者さまを討伐し、収益を上げる」というものです。

弊社が運営しているダンジョンの多くは弊社の営業部員が常駐勤務しており、勇者さまの討伐業務に従事しています。

弊社の中でもっとも多くの社員をかかえているのが当営業部でございます。社内で最も収益を上げる事ができる「花形部門」でもあり、この営業部では多くの社員が、まいにち生き生きと働いています。

ここからは実際に働いている人をイメージしやすいように、ある営業部員からのメッセージをご紹介したいと思います。


【営業部 スライムFさん(仮名)】

私は2016年に入社して営業部に配属され、現在3年目です。

当社へ入社したのは、社員の皆様の温かみを感じた事と、入社後に当社で働く自分の姿が想像できたからです。

当社へ入社した最初の1ヶ月は新人研修を受けさせて頂きました。

一番初めに行われた研修の内容は「○○があらわれた!」と、元気よく発声するという内容でした。

最初は恥ずかしくてうまく声がでませんでしたが、だんだんと慣れてきて最後は「スライムFがあらわれた!」と元気よく言えるようになりました。

私より前の順番に、スライムA(仮名)さん、同じくBさん、Cさん、Dさん、Eさん(いずれも仮名)がいらっしゃいました。私は一番最後だったので、みんなより大きな声を出してやろうと頑張りました。

私が初めて配置されたダンジョンは、同期のAさん~Eさん達と同じ営業グループでの勤務となりました。同期の新人同士、同じ場所で勤務できる事をお互い喜び合いました。

初めて上司に連れられて勤務先のダンジョンに最初に入った時は「少し暗いかな」と感じられました。でも勤務しているうちにだんだんとその暗さに慣れてきました。

いまでは、この暗さが「心地よい」とすら感じるようになりました。逆に外に出たときは「明る過ぎる」と思うようになりました。

勤務先のダンジョンでまず初めに行ったのは「宝箱の中身の入れ替え作業」でした。

ダンジョンに配置してある宝箱の中身は、弊社の「広報部」から出される指示に従って入れ替え作業を行います。新人は他部署のお手伝いを通じて、会社全体の業務を覚えるというシステムになっています。

また、「先輩が討伐した勇者を棺桶に入れて町へ送り返す」という業務を行う事もあります。

勇者さまの中には、何度も倒されてしまわれるかたもいらっしゃいます。そんな勇者さまは、我々の仲間内では「常連さん」と呼ばれています。

私が今いるダンジョンには「中ボス」が配置されております。初めていらっしゃる勇者さまにたいしては「よく来たな。返り討ちにしてくれるわ」と発言しておりますが、常連さんの勇者さまが来られると「またお前か、グヘヘ」というような会話に変化するとの事でご好評いただいております。

ある日、営業部の仲間たちとダンジョン内の定期清掃を行っていたら突然、目の前に勇者さまが現れました。

私たちはとっさに「スライムたちがあわられた!」と元気よく発声しました。

あまりの急な出来事だったのにもかかわらず、自分達でもちゃんと言えたのがビックリしました。これも毎朝かかさず朝礼で繰り返し唱和していた成果が出たのだと思います。

そしてすぐに、お互い戦闘モードに入りました。

勇者さまは、ブーメランを武器として構えていました。私は「えっ、ブーメランで戦えるの?」と正直おもいましたが、すぐにそれは目の前に飛んできました。

飛んできたブーメランは、営業部の仲間のAにあたり、Aが亡くなりました。そして同様に、B、C、D、E、と順にあたり、みんなその場で亡くなりました。

私にもブーメランが当たりました。しかし、私が列の後ろの方だったからでしょうか、私はなんとか生きていました。

そしてすぐに逃げ出しました。逃げるときは「スライムFは逃げ出した!」と大声で言いました。

これが、私の最初に行った営業活動の思い出です。私は今でも3年前の「あの日」を忘れずに生きています。亡くなった同期たちの想いを胸に、今日も私は仕事を続けています。

(メッセージ・終わり)

 


どうでしたでしょうか。なかなかオンもオフも充実した生活を送っているようでしたね。弊社にはプライベートも常に一緒にいても飽きないような気さくな仲間がたくさんいます。もし興味があるようでしたらいつでも「採用担当」へお問い合わせください。

続いては人事部長より「魅力ある人材を創造する弊社の企業文化」についてご紹介頂きたいと思います。

 

【人事部 部長 メッセージ】

こんにちは。私は2年前に今の社長に引き抜かれ、他社からやって来て人事部に配属されました。

近年の「働き方改革関連法案」に対応するために、どうしても力を貸して欲しいと社長に懇願され、こんな私でも助けになるならとの思いから当社への入社を決意いたしました。

まず私が入社してすぐに改革を行ったことがあります。それは暗黙的な24時間営業の撤廃です。

残念ながら2年前の当時、弊社では暗黙的な24時間勤務が常態化しており、社員たちも慣例にそって24時間、いつでも営業しているという状態を作り上げていました。

それは「いつ勇者さまが来ても対応できるように」とか「いつでも開いているのが当たり前だから」という旧態依然とした悪しき風土が変わらずに残ってしまっていたという事です。

私は正直、それはおかしいでしょうと思いました。なんで勇者さまはまいにち宿屋で寝ているというのに、我々は24時間休まずに、ダンジョンの入り口を空けておく必要があるんだ?って社長に言ったんです。

そして、社長も「確かにおかしいよね」って言ってくれたんです。そこからですよ、色々と会社の体制にメスを入れて行きました。

まずね、ダンジョンの入り口を18時で閉めなさいって言ったんです。でもね「営業部」からすごい反対意見が上がってきてね。そんな事「人事部」に口出しされる筋合いは無い、ってな感じだったんだよね。

でもね、入社するときにみんな「標準勤務時間9時~18時」って説明されているはずなんだよね。契約書にもそう書かれてあるのに、なんでどうして18時以降の勤務が常態化しているだよっ、って話なのよ。

本当に会社と社員の事を考えているのは「俺」と「営業部」とどっちなんだって、経営会議の場で社長に言ったわけよ。俺もクビになる覚悟で発言したからね、すごい剣幕だったと思うね。そうしたら社長がみんなに「すまんが、みんな、変わってくれ」って頭を下げてくれたんだ。

普通に考えたらそうだよね、18時以降の残業代も支払われないのに勤務を強制させる会社なんで誰も入りたくないよって話よ。

そんな長時間労働を強制させる会社には魅力ある人材は来ないと思うのよ。魅力ある人材がいないとなると、普通に考えたら勇者さまも来なくなっちゃうよね。

そんな要領で8時間労働制に変えていったんだけどね、地方のとあるダンジョンが赤字続きに転換しちゃったんだよね。

なんでも「夜に入ると冒険感があり雰囲気がとても良かったのに、昼間に入ると明る過ぎてすごく萎える」だってさ。そんなつまらない理由から勇者さまが来なくなっちゃったんだよ。

だから俺は「お前ら、だったら夜間に営業して昼間は休めよ」って言ったのよ。なんで社長に言われた通りに9時18時の勤務時間だけを守ってんだよって話、もっと柔軟に考えろよな、ってね。

そこからかな、もともと上司に言われた通りにしか動く事の出来なかった連中が、どんどん自分の意見を出すようになっていったんだ。

もうね、色んなアイディアが出てきてね。どんどん経営会議の場で議題に上げて行ったんだ。

これらは、そのアイディアの一部ね、色々出てきたなぁ、「ダンジョン結婚式」「ダンジョンコンサート」「ダンジョンナイトプール」「初心者向けダンジョンツアー」「ダンジョン脱出ゲーム」とかね。

もうね「ダンジョン脱出ゲーム」なんて一周回って元に戻ってきたよね。もともと脱出しなきゃいけない場所を「ダンジョン」って言うんだよって話、そもそも最初からそういうゲームなんだよな、ってな。

(部長メッセージ・終わり)

 

終わりに

さて、本日は様々な視点より弊社「株式会社ダンジョン開発」の魅力をご紹介させて頂きました。

まだご紹介できていない部分もたくさんあります。それは是非、あなたご自身の目で確認していただければと思います。

新時代をリードする「株式会社ダンジョン開発」、弊社では様々な取り組みを通して地域社会への貢献事業にも従事しております。

毎年8月には、過去に討伐させて頂いたすべての勇者さまの「合同慰霊祭」を開催しております。

ダンジョンの奥深くで新時代の魅力を創造しつつ、過去の歴史・文化への継承と、霊魂への畏敬の念を持って接する事の大切さも合わせて伝えていければと考えております。

それに合わせる形で、残念ながらも勇者さまに倒されてしまった「弊社営業部員」への供養も今後いっそう手厚くしてまいりたいと考えております。

 

我々の開発・運営しているダンジョンが、この目まぐるしく移り変わる現代社会において皆様が少しでも心が休まる場所としての役割を提供できればと思います。そして私たちの創造するダンジョンが「魂のプラットフォーム」たらんことを切に願うばかりです。

それではまたどこかのダンジョンの入り口でお会いしましょう!